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「本当はこう言いたいのに、言えない」「自分の気持ちを伝えたら、嫌われるんじゃないか……」。
そんな不安から、言いたいことを飲み込んでしまうことはありませんか?
職場でも、友人関係でも、恋愛でも、本音を言えずに相手に合わせてしまう。その場では何とかやり過ごせても、
家に帰ってから「本当は嫌だったのに……」「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」
「もっと自分の気持ちを言えばよかった」と、何度も考えてしまうこともあります。
本音が言えない人は、「話すのが苦手だから」「コミュニケーション能力が低いから」と思っているかもしれません。
でも、実際にはそうとは限りません。むしろ、「本音を言うこと」よりも、本音を言った後に起こることが怖い。
そこに、本音が言えなくなる大きな理由があります。
この記事では、本音が言えない理由を整理しながら、少しずつ自分の気持ちを伝えていくための方法についてお話しします。
本音を言えないとき、頭の中ではこんなことを考えていないでしょうか。
つまり、怖いのは「自分の気持ちを話すこと」だけではありません。
その先にある相手の反応を想像してしまうのです。
たとえば、「私はこう思う」と伝えたあとに「でも、それは違うんじゃない?」と言われる場面を想像する。
「今日は行きたくない」と断ったあとに、「付き合い悪いね」と思われる場面を想像する。
すると、実際にはまだ何も起きていないのに、頭の中ではすでに「嫌われた自分」を体験してしまいます。
だから、言わないほうが安全。そうやって、自分の気持ちを飲み込むようになります。
ここは、とても大切なところです。
本音が言えない人の中には、普段は普通に人と話せる人もたくさんいます。仕事の会話もできる。雑談もできる。相手に合わせて話すこともできる。それなのに、「自分の本当の気持ち」を話そうとすると、急に言葉が出なくなる。
これは、「話す能力」の問題だけではありません。
「これを言ったら、相手はどう思うだろう?」という不安が強くなるからです。
言葉が出てこないというより、言葉を出す前にブレーキがかかっている。そんな状態とも言えるでしょう。
本音を飲み込むことが続くと、少しずつ心に負担がたまっていきます。
「今の言い方、大丈夫だったかな?」「ちょっと嫌な顔をしていなかったかな?」「怒ってないかな?」と、会話の最中から相手の表情や声のトーンが気になってしまいます。
相手の反応を確認しながら話すので、会話そのものに疲れてしまうこともあります。自分が何を話したいのかより、「相手がどう感じるか」を優先してしまうからです。
家に帰ってから、「余計なことを言ったかな」「本当はあそこで違うことを言えばよかった」「嫌な気持ちにさせてしまったかもしれない」と、終わった会話を何度も思い返してしまいます。
その場では普通に話せていたのに、後から不安が大きくなる。そんな経験はないでしょうか。頭では「もう終わったこと」と分かっていても、気持ちのほうが納得してくれないのです。
「私はどっちでもいいよ」「○○さんがいいなら、それでいいよ」「私は大丈夫だから」。
本当は違う意見があるのに、つい相手に合わせてしまう。
最初は人間関係を円滑にするための小さな譲歩だったとしても、それが続くと、
自分でも「私は本当はどうしたいんだろう?」と分からなくなることがあります。
「また言えなかった」「どうして私はこんなに弱いんだろう」「もっと普通に言えばいいだけなのに」。
本音を言えないことそのものよりも、言えない自分を責め続けることが苦しくなってしまいます。
でも、ここで自分を責める必要はありません。「言えない自分」には、それなりの理由があるからです。
ここで、一つ簡単なワークをしてみましょう。
本音が言えないときは、「何を言いたいのか」と「何が怖いのか」が一緒になっていることが多いものです。そこで、2つを分けて書いてみます。
| あなたが言いたいこと | 本当はどうしたい? | そのとき怖いこと |
| 「今日は参加したくない」 | 家でゆっくり休みたい | 付き合いが悪いと思われそう |
| 「私はこう思う」 | 自分の意見を伝えたい | 否定されそう |
| 「それは嫌だった」 | 傷ついた気持ちを伝えたい | 怒られそう・嫌われそう |
| 「今回はできません」 | 無理をせず断りたい | 相手をがっかりさせそう |
どうでしょうか。
「言いたいこと」と「怖いこと」を分けてみると、自分の中で何が起きているのかが少し見えてきます。
たとえば、**「私は意見を言いたくない」のではなく、「意見を言った後に否定されるのが怖い」**というケースがあります。
これは大きな違いです。「自分は本音を言えない人間だ」と決めつけるのではなく、「私は本音を言うことより、その後の相手の反応を怖がっているんだ」と分かれば、対処する場所も変わってきます。

いきなり何でも本音で話す必要はありません。
むしろ、「今日から何でも本音を言おう」と頑張りすぎると、かえって苦しくなります。
まずは小さなところから、自分の気持ちを扱う練習をしてみましょう。
誰かに何かを言う前に、一度だけ自分に聞いてみます。「私は、本当はどうしたい?」
これだけで構いません。たとえば、「どっちでもいい」と答えそうになったとき、
「本当にどっちでもいい?」と自分に聞いてみる。本当はこっちがいいと気づいたら、それだけでも十分です。
まだ相手に言えなくても構いません。まずは、自分自身が自分の気持ちを知ることから始めましょう。
本音を言うことに慣れていない人が、いきなり深い気持ちを全部伝える必要はありません。
「私はこっちのほうが好き」「今日は早めに帰りたい」「できれば○○がいい」。このくらいから始めてみましょう。
相手にとっても受け取りやすい、小さな自己表現です。「自分の希望を伝えても、必ず関係が壊れるわけではない」。
そんな経験を少しずつ増やしていくことが大切です。
本音を伝えるときは、「あなたは○○だ」と相手を責める形ではなく、「私は○○と感じた」と自分を主語にすると伝えやすくなります。
たとえば、「なんでいつも無視するの?」ではなく、「返事がなかったから、少し寂しく感じた」と伝える。同じ出来事でも、言い方によって相手の受け取り方は変わります。
本音を言うことは、相手を攻撃することではありません。自分の気持ちを、自分の言葉で伝えることです。
本音を言った後、「嫌われたかもしれない」と思ったときは、一度立ち止まってみてください。
そして、「実際に起きたことは何か?」を考えます。
たとえば、「自分の意見を伝えた」は事実です。一方、「相手は私を嫌いになった」は、
まだ確認していないのであれば想像です。
この2つを一緒にしないこと。それだけでも、頭の中で膨らんだ不安を少し小さくできます。
以前の記事でも「嫌われるのが怖い」という気持ちについて詳しく紹介していますので、
そちらも参考にしてください。
これは、本音を言ううえでとても大切なことです。
自分が丁寧に伝えたとしても、相手がどう受け取るかまで完全にコントロールすることはできません。
「嫌な気持ちにさせないように」「怒らせないように」「絶対に嫌われないように」と頑張り続けると、
いつの間にか相手の感情まで自分の責任にしてしまいます。
もちろん、相手を傷つける言い方を避ける配慮は必要です。
ただ、相手の反応をすべて自分の責任にしなくてもいいのです。
ここが分かると、本音を伝えるときの怖さが少し変わってきます。
「本音を言えるようにならなきゃ」。そう思って頑張っている人ほど、実は自分に厳しすぎる場合があります。
本音を言えなかった。相手に合わせてしまった。言いたいことを飲み込んだ。
そんな自分に、「またできなかった」「自分はダメだ」と追い打ちをかけてしまう。
でも、まず必要なのは「言えるようになること」だけではありません。
なぜ自分は、そこまで本音を言うことを怖がっているのか。
そこを知ることです。
過去に否定された経験があった。意見を言ったら怒られた。勇気を出して本音を伝えた結果、仲間外れにされた。
そんな経験があれば、「もう同じ思いはしたくない」と心が身を守ろうとするのは不思議なことではありません。
だから、「本音が言えない自分を変えなければ」と急ぐ前に、「自分は何を怖がっているんだろう?」と、
自分自身に目を向けてみてください。

頭では、「本音を言っても、すぐに嫌われるとは限らない」と分かっている。それなのに、いざその場になると、
「嫌われる」「怒られる」「関係が壊れる」という考えが先に浮かんでしまう。
これは、長い間の経験によって身についた「思考のクセ」が関係している場合があります。
過去の出来事から、「自分の意見を言うと嫌われる」「人に合わせていれば安全」「相手を怒らせてはいけない」という考え方が身についていると、現在の人間関係でも同じように反応してしまうことがあります。
頭で「大丈夫」と分かっていても、心がなかなか納得してくれない。そんな状態です。
そして、この「思考のクセ」は、自分一人ではなかなか気づきにくいものでもあります。
本音が言えないことに悩んでいるなら、カウンセリングを受けて、自分の気持ちや過去の経験を整理することをおすすめします。
もちろん、すべての人にカウンセリングが必要というわけではありません。自分で気持ちを整理したり、
信頼できる人に話したりすることで楽になる人もいます。
それでも、「何年も本音が言えない」「同じことで何度も悩んでしまう」「頭では分かっているのに、怖くて言えない」という状態が続いているなら、一人で頑張り続ける必要はありません。
カウンセラーと一緒に話していくことで、「どうして私はこんなに本音を言うのが怖いんだろう?」
「いつから、こう考えるようになったんだろう?」「本当は自分はどうしたいんだろう?」という部分を、
一つずつ整理していくことができます。
シャンティこころの相談室にも、「本音が言えない」という悩みを抱えて相談に来られる方がいらっしゃいます。
以前、会社員のNさんから、こんなお話を伺いました。
Nさんには、高校時代の部活動で、どうしても受け入れられないことがありました。そのとき、勇気を出して自分の本音を伝えたそうです。ところが、その発言をきっかけに、チームの皆から嫌われ、いじめを受けるようになりました。
その経験が大きな傷となり、Nさんはそのときのことに、ずっとフタをしていたのです。
大人になってからも、自分の意見を言うことが怖い。本音を話すことに抵抗がある。
そんな悩みを抱えて、カウンセリングに来られました。
お話を伺いながら感じたのは、Nさんを苦しめていたのは「本音を言ったこと」だけではなかったということです。
「本音を言ったら、人から嫌われる」
その出来事を、心が覚えていたのです。
そこで、当時の出来事を一つずつ振り返っていきました。
するとNさん自身が、過去の出来事を掘り下げる中で、こんなことにも気づかれました。
当時の自分の発言には、相手の立場を考えず、自己中心的になっていた部分もあった。自分は無意識のうちに、
人を不快にさせるような言い方をしてしまうことがある。だから、これからは自分の発言を少しずつ改めていきたい。
この気づきは、とても大きなものでした。
「本音を言った自分が全部悪かった」でもありません。「周りの人が全部悪かった」でもありません。
過去の出来事をただ白黒に分けるのではなく、「あのとき、自分には何が起きていたのか」
「自分はどう感じていたのか」「自分の言葉には、どんな部分があったのか」と、一緒に整理していったのです。
過去の出来事にフタをしたままでは、今の自分がなぜ本音を怖がるのか分からないことがあります。
でも、安心して話せる場所で一つずつ振り返っていくと、「自分はずっと、あのときの怖さを抱えていたんだ」と気づけることがあります。
Nさんのように、カウンセリングでは「本音を言えるようになる」ことだけを目指すのではありません。
自分がなぜ本音を言えなくなったのかを知り、自分自身を理解していく。
その過程そのものが、心を軽くするきっかけになります。
本音を言えない。相手に嫌われるのが怖い。自分の気持ちを伝えた後、相手の反応が気になって仕方がない。そんな状態が続いているなら、あなたが弱いからではありません。
これまでの経験の中で、「本音を言わないほうが傷つかずに済む」と学んできたのかもしれません。
だからこそ、無理に自分を変えようとするのではなく、「私は何を怖がっているんだろう?」「どうして本音を言うことが、こんなに怖いんだろう?」と、自分の心を少しずつ見つめてみてください。
そして、一人で整理することが難しいと感じたら、カウンセリングを利用してください。
シャンティこころの相談室では、本音が言えない、人間関係でいつも相手に合わせてしまう、
過去の経験が今も気になっている、といった悩みについて、一緒に整理していきます。
「自分の気持ちを話していい」と思える場所があるだけでも、心の負担が変わることがあります。
無理に答えを出す必要はありません。まずは、今抱えている気持ちを話すところから始めてみませんか。
※「断りたいのに断れない」「嫌われるのが怖くて頼まれると断れない」といった悩みについては、今後、別の記事でも詳しく取り上げる予定です。