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「なんか壁があるよね」。
何気なく言われたその一言が、ずっと胸に引っかかっていませんか。
自分のことを聞かれると、つい話題をそらしてしまう。休日の予定を聞かれただけで身構える。
ほめられても素直に受け取れず、困っていても「大丈夫」と言ってしまう。本当は人と打ち解けたいのに、
気づけば自分から距離を取っている。そんな自分にもどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。
心の壁は、過去に傷ついた経験から「これ以上傷つきたくない」と自分を守るために作られたものです。
壁がある人は冷たく見られがちですが、人が嫌いなわけではありません。
ただ、壁が厚くなりすぎると、本音を出せない息苦しさや、人とのつき合いの気疲れにつながってしまいます。大切なのは、壁を一気に壊そうとしないことです。自分の感情に気づき、安心できる相手に少しずつ本音を話していくと、心の距離は自然と縮まっていきます。
■本記事の信頼性
この記事は当相談室のカウンセラーが交代で執筆しています。心の壁を作ってしまう人の特徴や性格、
その奥にある心理をひも解いたうえで、自分の心の壁を壊す4つの方法を紹介します。
読み終えるころには「壁がある自分」を責める気持ちが少し軽くなり、認めることができます。
そして、人との関わり方に小さな一歩を踏み出せるはずです。
壁がある人の多くは、自分で壁を作っているつもりがありません。
「普通に接しているのに、なぜ?」と戸惑っている人のほうが多いでしょう。
周りが壁を感じるのは、たいてい日常のささいな場面です。
「週末どうだった?」と聞かれて「まあ、普通かな」。質問には答えているのに、会話がそこで止まってしまう。
相手への興味はちゃんとあるのに、何をどこまで話せばいいのか迷っているうちに、話題が次へ移ってしまうのです。言葉を選ぶのに時間がかかる、慎重なタイプによく見られます。
ご飯に誘われてうれしいのに、すぐに「行く」と言えない。
予定が空いていても、あいまいな返事で逃げ道を残してしまいます。
自分のペースを崩されることに、人より敏感なのかもしれません。
「そのアイデアいいね」と言われて、「いや、たまたまです」と返す。本人は謙遜のつもりでも、相手からすると好意を突き返されたように感じます。自分に厳しく、評価されるのが苦手な人ほど、この返し方が口ぐせになりがちです。
仕事が山積みでも、手伝いを申し出てもらうと反射的に断ってしまう。助けてもらうと申し訳なさが先に立ち、
かえって落ち着かないからです。周りからは「しっかりした人」に見える一方で、「頼ってもらえない」と寂しく思われていることもあります。
「これを言ったら、どう思われるだろう」。頭の中で何度もシミュレーションしてから、ようやく口を開く。
そのあいだに話すタイミングを逃し、結局何も言えずに終わることも少なくありません。
周りの空気をよく読める、繊細な人ほど陥りやすいパターンです。

では、なぜそんな振る舞いになってしまうのか。胸の内をのぞいてみます。
明るく振る舞っているときの自分と、家でひとり落ち込んでいる自分。
後者を知られたら、今の関係が崩れてしまう気がする。
だから、人前では見せても平気な部分だけを差し出して、本心には鍵をかけてしまいます。
親しくなればなるほど、離れていったときのダメージは大きくなります。それなら最初から深入りしないほうが安全。そう考えて、仲良くなりかけたところで無意識にブレーキを踏んでしまいます。
相手の返事が少しそっけないだけで、「もしかして嫌われた?」と不安になる。
その不安に耐えきれず、先に自分から距離を置いてしまう。
傷つく前に身を引けば、少なくとも自分から関係を壊したことにはならないからです。
友人がほかの人と楽しそうに話しているのを見て、嫉妬に似た寂しさを覚える。
本当は自分も輪に入りたいのに、その気持ちをどう伝えればいいのかわからない。
壁の内側には、「誰かにわかってほしい」という気持ちがちゃんとあるのです。
心の壁は、関係の種類によって表れ方が変わります。
同僚が雑談で盛り上がっていても、どのタイミングで入ればいいのかわからない。ランチに誘われても「今日はちょっと」と断ってしまう。仕事ぶりは信頼されているのに、「〇〇さんって、休みの日に何してるか謎だよね」と言われるのがこのパターンです。本人にしてみれば、職場でどこまで自分を出していいのか、その加減がつかめないだけということも多いものです。他人とかかわりたくないと思っているとは限りません。
恋愛では、女性・男性に関係なく、相手との距離が縮まるほど壁が厚くなる人がいます。LINEのレスはきちんと返すのに、将来の話や家族の話になると急に話題を変えてしまう。結婚を意識するような関係になったとたん、本音を見せるのが怖くなり、自分から離れてしまうこともあります。相手は「嫌われたのかな」と不安になり、すれ違いが生まれやすくなります。
長いあいだ自分を守ってきた壁を、いきなり取り払う必要はありません。
日々の会話の中でできることから試してみてください。
最近、「本当はこう言いたかったのに飲み込んだ」場面はありませんか。誰の前で、どんな話題のときに、どんな言葉を引っ込めたのか。スマホのメモに一行残しておくだけでも、自分がどんなときに身構えやすいのかが見えてきます。パターンがわかれば、次に同じ場面が来たとき、一呼吸おいてから言葉を選べるようになります。
「週末どうだった?」と聞かれたら、「映画を観てきた」のあとに「思ったより泣いちゃった」と添えてみる。
出来事に感想をひと言足すだけで、相手にとってあなたはずっと話しかけやすい人になります。
どの気持ちを言葉にするか、その選択に正解はありません。短いひと言からで十分です。
ほめられたら、「いやいや」の代わりに「ありがとう、うれしいです」と返してみましょう。
最初はくすぐったくても、好意を受け取る経験を重ねると、人から向けられる気持ちを少しずつ信じられるようになります。
「この資料、ちょっと見てもらえますか」「おすすめのお店、教えて」。そんな軽いお願いで構いません。
頼ることは、相手に関わるきっかけを渡すことでもあります。応えてもらえた経験が重なるうちに、
「人に近づいても大丈夫」と思える場面が増えていきます。
うまくいかない日があってもかまいません。昨日より一言多く話せたなら、それで十分な前進です。

心の壁がゆるんでくると、人と一緒にいるときの緊張がやわらぎ、付き合いの中での気疲れが減っていきます。
取り繕わなくていいぶん、人間関係そのものを楽しめる場面も増えていくでしょう。
とはいえ、長年の習慣をひとりで変えるのは簡単ではありません。「何から話せばいいかわからない」「自分の気持ちがよくわからない」と感じるなら、カウンセリングを頼るのも一つの方法です。安心して話せる場所で、飲み込んできた言葉を少しずつ外に出していく。その経験が、必要なときに人を頼れる力にもつながります。
シャンティこころの相談室では、あなたのペースに合わせて、心の壁の奥にある気持ちに一緒に向き合っていきます。「なんか壁があるよね」と言われたあの日のモヤモヤを、そのままにしておかなくても大丈夫です。